宇治拾遺物語との出会い

ルドルフの次回作「まつろはぬものの記 −探訪 宇治拾遺物語−」は、説話集『宇治拾遺物語』の「滝口道則、術を習ふ事」「石橋の下の蛇(くちなわ)の事」を原作とした作品です。

『宇治拾遺物語』のことは、高校のとき古文か日本史かで習って名前を知っていたくらいで、中身についてはほとんど知りませんでした。
舞台化しようと考えたのは、ふらっと寄った古書店でなにげなく買ったこちらの本がきっかけです。

日本古典文学幻想コレクションⅠ『奇談』。編訳は須永朝彦さん。
タイトルの通り、日本の古典文学から「奇談」をテーマにお話を集めた一冊です。

このなかに「外法」のタイトルで『宇治拾遺物語』からの一編が掲載されており、そのあまりのくだらなさに衝撃を受けました。それが、今回の原作のひとつである「滝口道則、術を習ふ事」です。
あらすじは割愛しますが、平安時代からこんなしょうもない話を楽しんでいた人たちがいたのだ、と思うと途端に平安時代の人々にたいして親近感がわいたのです。
須永朝彦さんの、格調高いのにどこかすっとぼけた感じの現代語訳も、お話の面白さをいっそう引き立たせていました。

これをきっかけに『宇治拾遺物語』全編の翻訳本を買って読み、面白いお話がほかにもたくさんあることを知ってますます興味をひかれ、しばらくしてから舞台にしてみようかな、と考えはじめたのです。
舞台化にあたって「滝口…」をよく読んでみたらただくだらないだけの話でもなかったのですが、そのへんはまた改めて。

偶然の出会いは、頑張って求める出会いよりもなんとなく信頼できてしまいます。なぜだかはよくわからないんですが、なぜだかよくわからないところが信頼できるのかもしれません。