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まつろはぬものの記:登場人物紹介① 源隆国(二口大学)

  • 2017年9月7日

ルドルフ次回公演「まつろはぬものの記 −探訪 宇治拾遺物語−」まで、あと1ヶ月ちょっとになりました。キャスト紹介も兼ねまして、本日より登場人物の紹介をおこなっていきたいと思います。

第1回目の本日は「源隆国」。演じてくださるのは二口大学さんです。この作品の「狂言回し」のような役目を担っていただいています。

左:源隆国の肖像画(国立国会図書館ライブラリより)/右:二口大学

なんとなく、似た感じのおふたりです。

源隆国は、平安時代後期の公卿で、実在した人物です。「まつろはぬものの記」の原作である「宇治拾遺物語」の元ネタとなったとされる「宇治大納言物語」の作者、といわれています。「四納言」のひとりである源俊賢の次男で、要職を歴任したのち大納言まで昇進した、ざっくり言うとめっちゃ偉い人。

源隆国は、「宇治拾遺物語」の序文で次のように紹介されています。少し長くなりますが引用します。

世に宇治大納言物語といふ物あり。この大納言は隆国といふ人なり。《中略》年たかうなりては、暑さをわびて暇を申して、五月より八月までは平等院一切経蔵の南の山ぎはに、南泉房といふ所に籠りゐられけり。さて、宇治大納言とは聞こえけり。
髻(もとどり)を結ひわげて、をかしげなる姿にて、筵(むしろ)を板に敷きてすずみ居侍りて、大きなる打輪をもてあふがせなどして、往来の者、上下をいはず呼び集め、昔物語をせさせて、我は内にそひ臥して、語るにしたがひて大きなる双紙に書かれけり。

「宇治拾遺物語」の原本となった「宇治大納言物語」は、大納言・源隆国が、平等院の南にある「南泉房」というところで、身分の上下を問わず往来の人々を呼びあつめ、昔物語をさせ、それを紙に書きとめていったものである、というようなことが語られています。
実際、「宇治拾遺物語」には庶民・武士・貴族・僧侶などさまざまな身分の人を主役にした、多種多様な物語がおさめられています。

平安時代は現代とは違い、容易に越えられない「身分の差」がはっきり存在した時代です。そんな時代に伝説とはいえ「身分の上下を問わず」宇治を行き交う人々から物語を集めたとされる源隆国を、私はとても開放的で魅力的な人物だと思いました。面白いことのためなら多少の障壁は気にしない、おおらかで親しみやすい人物像が浮かんできたのです。資料をあたるといたずら好きであったことを匂わせるような逸話も残されています。おおらかで親しみやすく、ちょっといたずら好きのおじさん。この人に登場してもらったら楽しそうだな、ということで、本作の語り部になっていただくことにしたのです。

この隆国が、昼公演「光の章」では大和国の紙職人の娘(庶民)から、夜公演「闇の章」では全国を行脚する芸能集団・傀儡子(くぐつ)の男たちから、それぞれ「石橋の下の蛇の事」「滝口道則、術を習ふ事」という物語を話し聞かせてもらう、というのが本作の大筋です。
演じる二口大学さんがどのような隆国像を描いてくださるのか、とても楽しみにしています。

次回は、夜公演「闇の章」に登場する架空の人物、傀儡子の男「但馬(たじま)」(演:田中遊さん)をご紹介します。

本公演の脚本執筆にあたっては、三重大学人文学部特任講師の村口進介さんに資料提供など多大なるご協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。